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ひまわり

「風の生まれる時」より

更新日:2020年6月25日

前置きがながくなりました。ようやく本題に入ります。 結婚して二ヶ月。早くも懐妊。(笑)新婚気分もあっという間、かみさんのお腹が大きくなって行く。 予定日の少し前、ボクはいつもの様に軽く晩酌をして寝ていた。 23時頃、かみさんがボクを揺り起こす。  「おしるしが来た!行かないと…。」  「え?破水したの?今から病院?マジで?」 一緒に診察に通い、マタニティ本を斜め読みした夫の認識など、この程度なのである。  「飲むんじゃなかった!まさか…。」 別棟に住んでいるかみさんの父親に助けを頼もうと思ったが、なんと義父も飲んでた!(苦笑) 男はいかんの〜! 全部書いても意味がないので、肝要なところを! 産院の前室で陣痛が強くなるのを待つ。 かみさんもボクも出産は初めてなので、不安が胸にあるが、長期戦は覚悟の上、焦っても仕方がない。 LDRに案内されるまで、ここで待機することになるらしい。 隣の前室では、かみさんの前から待機している別の妊婦さんが、  「痛い痛い!助けて〜!」と叫んでいる。 ボクたちは、あのくらい痛くなるまで呼ばれないんだと思って、のんびりその時を待った。 が、先にLDRに案内されたのはうちの方が先。 看護婦さんは同じ部屋にはいないけれど、ちゃんと心電図等モニターされている。 結局、かみさんは一言も痛いということなく、LDRに通された。  「痛くないん?」 ボクは心配になって聞いたのだけど…。  「痛いんは痛いけど、叫ぶほどでは…。もっともっと痛くなるんだろうから、この程度では…。」 これは後から考えたことだけど、覚悟が決まっていると、感じる痛みも違うのかも知れない! 件の妊婦さんは、かなり痛がり叫び続け、後日、同時期に前室にいたと知った時、うちのかみさんに「二度と子どもを作りたくない!死ぬかと思った。」と愚痴ったそうだ。 翌朝6時頃、かみさんはそれなりに陣痛を乗り越え、長女を無事出産した。  晴れやかな笑顔だった。 ボクは一度彼女の手を握り締め、励まし、助産師に促されて腰を数回撫でた程度で、後は写真記録班に徹していた。  正直に言う!  男は何の役にも立たない!  そして、出産を目の当たりにすると、本当に意気地が無い! 写真を撮っていたからこそ、ボクはその場に立ち会えたと思う。 世の男性たちにオススメする。立ち会い出産時には、武器(身を守る楯)としてカメラを持っていた方がいい! 裸眼で見るより、レンズを通して見た方が気が紛れる。(笑) 写真や動画を残すという使命があれば、男はそっちに集中していられる。 そして、その映像は、きっと奥さんに感謝されること請け合い。 本人は痛みで何も覚えていないのだ! 産んだ実感はあっても、痛かったこと辛かったことしか覚えていない! 緊張と弛緩。 痛みと相殺し合っていたエンドルフィンが、一気に恍惚とした状態にかみさんを持って行く! 苦痛に歪んだ顔が解けて、何とも幸せそうな顔になる。 赤子に乳を含ませて、安心して眠るかみさんは、もう、妻ではなく母の顔になっていた。 その顔ももちろん、写真に記録する。 夫である自分は、今まで見たことのない妻の新しい顔を見ることになるのだ。 これを見ないのはもったいない! 生まれ出た新しい家族の顔も忘れがたい! でも、まだ人の顔はしてない。 別の生物みたい! 数時間で物凄く変化し、みんなが思う赤ちゃんの顔になる。

生命の神秘!            

 続く         

 紙芝居師 夢追人拝




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