5月27日
9時 出産までのカウントダウンが始まりました。
私は診察台にのせられ、アレルギーテストやレントゲンなどあらゆる準備を施されながら「家族に電話してもらえる?!」と言われ、電話で連絡。
家族に手術の合意をとることになりました。
すぐにかけつけられたのは病院から5分のところに住んでいた両親。
母の顔を見た瞬間、思いがけない急展開への不安から涙がこぼれましたが、ゆっくりと会話を交わす時間もなく、私は手術室へ運ばれたのです。
さて、生まれてこのかた大きな病気も手術も受けたことがない私にとって、注射や点滴ですら大嫌いなのに、帝王切開なんて恐怖でしかありませんでした。
いくらお母さんになるからと言ってもお腹を切るなんて・・・無理!!
実際、帝王切開は下半身麻酔です。
ドクターたちの声も手術器具のカチャカチャいう音もよく聞こえるので恐怖を感じました。
怖いと思ったらとても敏感になるもので「あ、今なにをしているのかな」と気になりはじめたら、もう怖くてたまらなくて「やっぱり無理です!」と逃げ出したい気持ちになっていました。
そんな時です。私の耳に心地よいクラシック音楽が聞こえてきました。
「K先生は手術中に大音量でクラシックをかけるんだよ」と知り合いが言っていたことを思い出し、少しだけ冷静になることができました。
しばらくすると数名の看護師さんが手術室に入ってきたことに気が付きました。
様子を伺っていると、一人の看護師さんが近寄ってきて「私たちはNICUのある病院からきました。外で救急車が待機しています。赤ちゃんはこれに入れて大切にお連れしますから頑張りましょうね」と輸送用の箱を見せて言いました。
たくさんの人が動いてくれていることに、先ほどまで怖くて逃げだしたい気持ちになっていた自分が恥ずかしくなり、ようやく私は覚悟を決めました。
手術がはじまった後は寝ている私には感覚がなく、今どの段階の作業がすすんでいるのかも全く分かりませんでした。
ある瞬間に赤ちゃんの泣き声がし、先生が「出たよ」と言う声で横を見ると赤ちゃんの姿が見えました。
「危ない」と言われた私の赤ちゃんが元気な声で泣いていることに心から感動しました。
その後、体をふいて、救急車が運ぶ前に私の手のひらにのせてくれました。
1418グラム。
とてもとても小さいけれど、元気いっぱいに動く赤ちゃんは男の子。
赤ちゃんの状態はへその緒が絡まって、羊水も濁っていたので今出していなければ本当に危なかったとのことで、自覚症状がなかった分、入院していて本当にいただいた命だと感謝の気持ちでいっぱいになりました。
その後すぐ赤ちゃんは救急車で別の病院のNICUに運ばれたので、かけつけた義父母と夫は間に合わず、道中ですれ違った救急車が息子の乗ったものだったと知ったのはしばらく後のことでした。
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