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『雫の生まれる時』より『回転』

頭が出て、肩まで出て来た赤子は、後はちゅるりんとでもいう様に、 素直に押し出されて来る。 が、今まで四つん這いだったかみさんは、その動きに併せて手を赤子の頭に伸ばし、

しゃがみこんだ時には、先生によって取り上げられ、かみさんの腕に抱かされていた。  実に呆気ない! その速い動きの中で、ボクにはよく分からなかったのだけど、 赤子は回転しながら生まれ出て来るらしい! 四つん這いの時の写真には、かみさんの背中側に赤子の顔が写っている。 が、出て来た時には、顔が前を向いており、かみさんと赤子は、向き合った状態で生まれた。  「初めまして!こんにちは…。」 分娩台の上では絶対に分からないと思うけれど、この体勢だからこその光景だったのだと思う。 そもそも、頭が見え始めた時、先生はかみさんの手を導き、赤子の髪の毛(頭頂部)に触れさせた。 かみさんはいよいよ出て来る赤子に、痛みはあっただろうけど、喜びと前向きな気持ちを持ったであろう。  そして自分の目で見ながらの我が子の誕生。 カーテンで下腹部を隠されての出産とは、また違った雰囲気だ。 書き忘れていたが助産院では、分娩時、照明の光量が落とされ、仄暗い中でその神秘の儀式が行われる。 煌々とたかれた手術灯に照らされての出産と、全く雰囲気が違うのだ。 ボクはそのどちらをも体験できてよかったと思う!  しっかりと両手に抱かれた赤子。  それを真横で見る長女。 かみさんの顔には、なんとも言えない安らぎの表情が浮かんできた。 むろん、まだへその緒は繋がったままの状態である。 長女の時、かみさんがきちんと赤子を抱いたのは、へその緒を切った後だったと思う。 一度は助産師さんによって抱かされたけれど、汚れよけのシートの上からだったし、すぐへその緒を先生が切って、洗い場に連れて行かれた。 産湯を浴びてきれいになってから、ようやくかみさんの胸にやって来た。 産婦人科では会陰切開をする。 出産によって裂けるのを、事前に回避するための処置である。 だから、生まれて来た長女は血だらけだった。 この経験から、ボクは次女の立ち会い出産の時にはカラーフィルムを止め、白黒での撮影に切り替えたのだが…。 助産院ではその必要はなかった! 自然に裂けるに任せ、でも、その傷は自然にくっつき、治りも早かった様に思う。  へその緒が繋がった状態でベッドに戻り、しばし休む。  そして…。   続く   紙芝居師 夢追人拝




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